• 10 minutes walk – the West End to the History of Politics, Justice and Journalism

    Posted on 7月 7, 2013 by in I Love London, LSE Cities Programme Projects, まちあるきのコツ, まちづくり

    方向音痴気味の方々や観光客の方々に限った話ではなく、ある街に暮らし始めて、いつもと少しだけ行動パターンが変わると、「あれ?こことあそこって歩いてみると、意外にもこんな近くにあったんだ」という発見をすることがあります。

    『「心理的」徒歩圏』とでもいうのでしょうか。

    10年前、ロンドン大学LSEの大学院で「まちづくり」(City Design)を専攻していた時のことです。
    地図のある一点に印をつけ、そこからコンパスで徒歩5分(250メートル)、徒歩10分(500メートル)と二重に円を描いた地図と、それとは別に、同じポイントから、建物や立ち入り禁止区画を除いた実際に徒歩で歩ける経路、5分、10分のエリアをマークし囲んでみた地図を見比べて、いかに両者が実際は異なっているかということを、デザイン提案をする前のエリアの現状把握のためによく実施していました。

    都市整備、不動産、商圏、警備・防犯などの業界では、もしかしたら、当たり前のことかもしれませんが、この後者の実験でできあがった地図(コンピュータ上でそれをシュミレーションするソフトもあります)は、当然のこと、きれいな二重な円を描くわけではなく、まるで黄身と白身がいびつな目玉焼きのようになることから、通称「Fried Egg Model」と呼ばれています。

    それまで、マーケティングの分野で仕事をしていたココロンドンにとっては、まちづくりのハードの部分である、建築物や道路区分に対し、そこを実際に歩いたり、まちという空間を実際に利用する人々の「心」と移動する手段である「足(身体)」に着目し、「まち」を利用する人々の心理と行動の現状をより鮮明に映し出したインフォグラフィックとして有効なツールと考え、この「Fried Egg Model」をプロジェクトの度に必ず作成していました。

    それまでも何度か観光で来ていたココロンドンが、ロンドンに暮らしはじめて『「心理的」徒歩圏』を一番最初に大きく感じた場所。

    それは観光地として有名な「コヴェント・ガーデン」と、王立裁判所、かつて英国領だった国の領事館、ロンドン大学LSE(ロンドン大学政治経済学部)ロンドン大学キングス・カレッジ(現・大学図書館はかつてのイギリス公文書館)などがある「ホルボーン」。

    英国が誇るバレエとオペラのロイヤルオペラハウスを始め、人気一大ミュージカルを上演している数々の劇場に囲まれ、無数のカフェ・レストラン・ショップが立ち並び、観光地としておなじみの「コベントガーデン」と、イギリスの政治・経済、司法、ジャーナリズムの歴史の聖地と、実は、大人の足で徒歩5分〜10分程度の距離なのです。

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    (左)大道芸人が集まるいつも賑やかな「コヴェント・ガーデン」と(右)ホルボーンから南にまっすぐ伸びるキングスウェイ。

    地図を見ていただくとわかりますが、ホルボーン駅からまっすぐにテムズ河に向かって南、インドやオーストラリア領事館が並ぶAldwych(アルドウィッチといういささか読みづらい地名、1994年まで地下鉄の駅があったが閉鎖された)に伸びる、その名も「キングス・ウェイ(Kings Way)」。

    この「キングス・ウェイ」を境に、いわゆるエンターテイメントの中心、ソーホーからコヴェント・ガーデンにかけてのまちの空気感と、政治・経済・司法の歴史的聖地のまちの空気感と、建物も路の構造も歩いている人々の雰囲気も、たったの5分かそこらで一気に変わるのがわかります。


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    ※ 地図のポイントは、王立司法裁判所 (Royal Court of Justice)。

    まずは、コヴェント・ガーデン周辺。

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    小さいけれど、ロンドンでは最も有名なラウンダバウト、『セブンダイアルズ(Seven Dials)』。繁華街や劇場が並ぶレスター・スクウェア(ソーホー)とコヴェント・ガーデンを結ぶ7本の放射状の道路が交差するラウンダバウト。アガサ・クリスティーの作品『7つのダイアル(The Seven Dials Mystery)』 (1929)とも所縁のあるこのエリア。
    チーズの香りがほのかに漂ってくる、ニールズ・ヤード(Neals Yard)も、挽き立てのコーヒーの香り漂う、モンマス・コーヒー(Monmouth)本店もすぐそば。
    ただ、今でこそ、レスター・スクウェアとコヴェント・ガーデンのエリアは『ウェスト・エンド』と呼ばれているが、アガサ・クリスティーの時代は、レスター・スクウェア(ソーホー)、コヴェント・ガーデンは、下町、イースト・エンドだったとのこと*。
    *鈴木博之『ロンドン――地主と都市デザイン』(ちくま新書、1996)によれば、ロンドンのウエスト・エンドとイースト・エンドを分けているのはリージェント・ストリートであるという。「リージェント・ストリートを境にして、ウエスト・エンドの高級住宅地の名残りとイースト・エンドの下町の風情とが、両側に広がっているのだ。ここにリージェント・ストリートの都市的使命があった。/リージェント・ストリートは、ロンドンのまさしく分水嶺、西と東を分ける装置として引かれた道なのだ」

    一方、ホルボーン周辺。

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    政治の都ウェストミンスター地区と金融の都シティ地区の境に、王立司法裁判所(Royal Court of Justice)。映画「ダヴィンチ・コード」や映画「ブリジット・ジョーンズの日記」の撮影にも使われていた風景。この辺りは弁護士事務所が多い。 つい最近まで「Wig and Pen(かつらとペン)」という名のレストランだったタイレストラン。もちろん、かつらは司法の象徴、ペンはジャーナリズムの象徴。インドから輸入される良質な紅茶の文化を広めたトーマス・トワイニング。小さな紅茶博物館のあるトワイニングの本店も。二階だてバスや車を塗っての結婚記念写真の撮影中、このドラゴンの像は、ここからは金融街「シティ」の入り口とのサイン。裁判所を過ぎると、そこからはシティ。西と東を結ぶ「Strand」、ここから名前が「Fleet Street」に。

    ロンドンの宗教・政治・司法・経済の歴史の聖地とジャーナリズム発祥の地と、ロンドンの大衆エンタテインメントの中心、現在「ウェストエンド」と呼ばれるエリアは、たった徒歩5分〜10分移動しただけでその違いを感じれる距離。

    江戸・東京に置き換えると、永田町から有楽町・銀座、そして丸ノ内の位置関係を思い出させる、そんな街と人の歴史を感じさせるまちあるきなのです。

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