• Beloved artist: J.M.W. Turner

    Posted on 10月 7, 2013 by in I Love London, おすすめU.K.ブログ, アート・デザイン, 季節・天気, 美術館・博物館, 風景

    日本は10月のこの時期といえば、運動会シーズンの青い空に象徴される、空気も空も澄み切った「天高く馬肥ゆる秋」。1万キロ離れたロンドンでは、今年は例年よりは少し暖かい秋本番。

    確実に木々の葉はレンガ色や黄色に染まり、風が吹けば地面に舞い、今週も「霧」と「もや」でのスタート、空を見上げれば、たくさんの雲たちが列をなして青空を見せてくれたと思ったら隠しては、行ったり来たり、時々雨を降らせながら、木の葉も散り、秋の夜長へ、こうして確実に冬に移り変わって行きます。

    変わりやすいと言われるロンドンの空がますます変わりやすい、天気予報が信用できないともいえる?!秋の空。
    一日の中でも、温度や空の色や光が刻々と変わって行くのを感じられる季節。

    さて、イギリスの風景と空と光の移り変わりをキャンバスに見事に映し出し、イギリス人に最も愛される国民的画家といえば、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。ココロンドンも大好きな画家の一人です。

    この度、日本で、英国最高の巨匠・ターナーの回顧展が、明日2013年10月8日(火)〜12月18日(水)東京都美術館で、そして来年1月〜4月、神戸市立博物館で開催されます。

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    こちらは、本日(10月7日)の朝日新聞朝刊・掲載記事。
    記事内の写真は、1990年よりロンドン在住、海外の大物俳優・ミュージシャンはじめセレブの撮影や、日本の書籍・各誌にイギリス発の写真を提供、幅広い活躍をされている在英フォトグラファー 富岡秀次さん

    ターナーの作品約2万点ものコレクションは、ロンドンのテート美術館、ミルバンクにあるテート・ブリテン(旧テート・ギャラリー)に収められており、もちろん、ココロンドンも何度か足を運んでいます。

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    ハーフターム中(学期中休み)、ファミリー向けのイベントが行われていた日のテート・ブリテン。
    イギリスの子ども達は幼い頃からこうやって惜しげもなく巨匠の作品と気軽に共に時間を過ごす事ができるのですね。

    ただ、2002年来英した当時は、ミレニアム・ブリッジが開通した南側、サウスバンクに、発電所を改築したモダンなブリティッシュ・アートを主に展示するテート・モダンがオープンしたばかりで話題になっていた頃。

    本音を言いますと(乱暴な言い方をするなら)「イギリス人に最も愛されるという、国民的画家」のターナーの作品ばかりが、これでもかこれでもかと展示されているテート・ブリテンにはいまいち食傷気味、あまり面白みを覚えられず、同じテートに行くなら、テート・モダンの方が絶対良い!とさえ思っていたくらいです(テート・モダンは相変わらず大好きな場所ではありますが!)。実のところ、日本に比べ、はっきりとしないどことなく暗いロンドンの秋の空も、長い間は、あまり好きにはなれず憂鬱に感じていました。

    そんなココロンドンも、いつの間にかロンドンで10年を過ぎ、改めて、ターナーの作品を触れるにつれ、彼の絵の一枚一枚に想いを寄せ、いまやファンを自称する一人です。イギリス、ロンドンの風景の中の刻々と移り変わる温度の微妙な変化すら映し出す光、人々の情景をとらえた、ターナーの筆に込められた、自分が見ている景色とそう変わらないであろう景色への愛着、また彼自身の画家としての情景のようなものすら感じるように。絵の中にある景色を眺めていたであろう、その当時のロンドナーの暮らしぶり、情景を想像したりするのも、穏やかで幸せな「時間」です。

    昨今のロンドンには近代的な建築物がいくつか建設されており、インフラ・輸送手段は馬・船から自動車・列車・空輸と急激な発達を遂げているとはいえ、「幽霊が勘違いしてしまうのも当然」と言われる、実は、そう変わっていないイギリスの街並。そして、テムズ河の流れ。写真の技術が発達する前の18世紀末から19世紀、ターナーの絵画の世界には、今のイギリスとそう変わらないまちの空気感が存在しています。

    そこにはまぶしい太陽に照らされた派手な原色は存在しませんが、確実に過ぎて行く時間や季節の移り変わりと、時を経ても変わらずそこにあるイギリスの自然や建物・風景とが、優しい色で同じ絵画の中に存在しています。

    来英当時からつい最近まではロンドンのどんよりとした「秋」にどこかしら寂しさと憂鬱さだけを感じていたココロンドンも、人生の折り返し地点を迎えました。あえて白・黒と決めつけず、古くからそこにあるものと、巡り巡って変わって行く新しさが混在しているグレーの空のロンドンの街の包み込むような優しさに共感を覚えるようになったきた、ようやく少しは「大人」になったということでしょうか。

    朝日新聞の記事の写真にある富岡さんが撮影された『ウォーターブリッジからを臨むテムズ河』の美しい写真。
    10年近く前まではホームシックにもかかり、”この「東」の空のずっとずっと先に日本があるんだ”と橋を渡る度に感傷的になりカメラを取り出していた、かつての自分・・・随分、変わったものです。

    今朝の朝日新聞の記事には、こんなターナーが愛した風景と富岡秀次さんが撮影された写真も並んで掲載されています。

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    リッチモンド・ヒルにも、ターナーの描いたこんな風景(写真:富岡秀次さん)が残っているのですね。 

    ターナーがイギリスの魅力を愛着をもって情景として描き残したように、お写真を通じて、イギリス、ご自身含めイギリスに暮らす人々の魅力を伝えていらっしゃるフォトグラファー、ロンドンに暮らす大・大先輩のお一人、富岡 秀次さんのブログ「ロンドン・スナップ・ショット」。ロンドン・イギリスに住む日本人だけでなく愛読していらっしゃる方がたくさん。ココロンドンも毎回、記事のアップを楽しみにしている一人です。華々しい活躍をされている富岡さんですが、お写真はもちろん、一言一言に、謙虚なお人柄と被写体への優しい目線を感じます。

    さて、どこか変わらない自分もよし、変わっていく自分もよし、迷いがあるそんな微妙な自分でもよし。
    今はどんな気持ちの人たちも包み込んでくれるロンドンの心地よさ・優しさを愛するココロンドンから、日本にいらっしゃる皆様に、巨匠・ターナー展、ぜひ足をお運びいただきたいです。そして、ロンドンにいらっしゃる際には、ぜひテート・ブリテンにお立寄りください。

    そして、ロンドンの風景の中に、イギリスの風景の中に、ターナーが見ていた色を探しにいらしてくださいね。

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