• Pineapple and Budha’s head

    Posted on 6月 9, 2012 by in 小路・路地裏, 建築, 歴史

    近々、お迎えすることになっている日本からのお客様ご一行様のコースの下見もあり、ロンドンの街の奥深い歴史やトリビアを歩きながら(英語で)だいたい2時間で案内してくれる、街歩きツアー「London Walk」のリトル・ヴェニス(Little Venice)ウォーキングツアーに参加してきました。

    車で10分くらいの近所にあるリトル・ヴェニスは、自分では数回、足を運んだ事がありますが、周辺の歴史や街のトリビアを勉強するのは、今回初めて。

    ガイドさんとの待ち合わせ場所は、ワーウィク・アヴェニュー(Warwick Avenue)駅。 リトル・ヴェニスとは、ロンドン北西部、シティー・オブ・ウエストミンスターにあるリージェント・キャナル、グランド・キャナル、ロンドン・キャナルの三つの運河の集結地点の通称で、パディントンの銅像があることでも有名なパディントン駅からも徒歩でほど近いロンドンの中心地にありながら、ナロー・ボートが浮かぶ運河の水面に、街路樹や時折かかる橋の緑が移り、穏やかで美しい景色が広がるエリア。

    また、リトル・ヴェニスは遊覧船の発着所の名前でもあり、ここからロンドン動物園やカムデン・ロックまで、ゆったりとした時間の中で、ささやかな船旅が楽しめるのです。

    川幅の大きなテムズ河以外は水辺がほとんどないロンドンの街で、リトル・ヴェニスの名に惹かれて細い遊覧船で、岸辺の白い邸宅と樹木、白鳥と鴨の列を眺めて憩う人たち、運河沿いをランニングしたり、サイクリングしたり、散歩したり、思い思いに運河の流れと共に、少しずつ変化していく風景を楽しめる場所なのです。

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    リージェント運河に沿ったこのエリアにも、19世紀の初め、時の摂政 (英語でRegent)で後の国王ジョージ4世と彼の顧問であるジョン・ナッシュがメリルボーン・パークを含むロンドン北部の改造に取りかかり、リージェンツ・パーク(Regent’s Park)とリージェント・ストリート(Regent Street)を開発した頃と同じくして、美しい白い2階建ての白い豪邸が連なって建設された、閑静な高級住宅地。

    20世紀になると、このエリアの風景を愛し、住人となった有名人は数知れず、小説家、映画監督、音楽家、画家などが好んで夜な夜な近所で集まっていたそう。
    「ブルー・ボート」と言われる有名なナロー・ボートの住人はエルトン・ジョンはじめ錚々たる顔ぶれが週末ボートで行われたパーティに顔を出していたと証言したエッセイも出版し、1960年代〜70年代にかけてはこの周辺に音楽制作スタジオなどもあり、特に芸術家たちの集まるボヘミアンな雰囲気がそこここに漂っていたよう。ポール・マッカートニーがかつて住んでいた豪邸も、運河から近いすぐそこに。

    リトル・ヴェニス沿いにあるボートのカフェや、人形劇小屋のボート Puppet Theatre Burge、ボート内に乗り込んで楽しめる人形劇の小劇場も、なかなか味があります。

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    今日のLondon Walkでひとつ大きな発見がありました。

    それは、以前から気になっていた、ロンドンにある住宅の軒先や屋根によく見る「パイナップル」の秘密。
    今やビクトリア時代の豪邸だけでなく、通常のセミ・ディタッチドの家の軒先にも、パイナップルの像が置いてある家がよくあるのを、以前から不思議に思っていたココロンドン。

    ちなみに、これは、北ロンドンにある一般のセミ・ディタッチドハウスの軒先。

     

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    London Walkのガイドさんのお話によれば、イギリスの17世紀・大航海時代から18世紀にかけて、貿易・商人の海外渡航が盛んになると同時に、ロンドンには、奴隷が労働力として次々と運び込まれ、街に娼婦がはびこっていた時代、つまり、イギリスがアメリカ大陸を植民地化した時代、パイナップルのような南国の果実は当然貴重であり、パイナップルは、そのコミュニティの主格となる人物・家庭でのパーティや集まりの際に、その家庭のステータス・シンボルの役割をするモチーフになったとのこと。

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    ※上は、イギリスのインテリア・エクステリアショップ Occa Homeのトップページ。テーブルセッティングにもパイナップル!

    それがひいては、地域での富裕者を表すシンボルとなり、パーティや会が開かれる度に、わざわざ、パイナップルの像を他の家から借りるほどの欠かせないアイテムだったそう。

    長年、疑問に思っていたことでしたが、これでスッキリ。National Trust管轄のマナーハウス、Osterley Park and Houseの邸宅の屋根部分にもパイナップル。

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    さて、若干、話が横にそれますが、もう一つ、「パイナップル」の像と合わせて、ロンドンの通常の家のエクステリア・インテリアによく見かけ、日本人としては、若干違和感を感じるのが「仏像の頭」の像。

    日本でも、「劇的ビフォー・アフター」のような短期間での劇的な住宅改造番組、とても人気がありますが、似た内容のテレビ番組で、2007年から、チャネルitvで「60 minutes  makeover」という番組があります。これは、住人に内緒で、親しい友人や家族が家全体を「60分間」(60 minites)で完全リフォームしてしまい、最後は、何もしらずに戻って来た住人が、リフォームされた部屋をひとつひとつにサプライズ!感動!そして依頼主とデザイナーと涙のご対面がお決まりという非常にわかりやすい番組。さすが、DIY、住宅リフォーム、個人規模での’不動産転がし’(property ladder)が当たり前、「家」の話題が大好きなイギリス人の番組、ココロンドンも好きで時々見ています。

    ここでも、よく見かけるのが、帰ってきてくつろげるリラックスできるリビング・ルームへのモデル・チェンジを目指し、プロのデザイナーの手によって、スペースの片隅によく運び込まれる「仏像の頭」のレプリカ。まるで、日本人の部屋の熱帯魚の水槽のように、いとも気軽に、しかも結構大きいサイズのものが当たり前のようにインテリアに使われるアイテムなのです。

    日本人にとっては、リフォーム後のリビングルームに仏像の頭がどーん!では、かえってリラックスできない!と思わず突っ込みを入れてしまいたくなる場面です。

    しかも、個人のお宅だけでなく、ガーデンにも、軒先にも「仏像の頭」。そして、SPAと呼ばれる、街の中にあるリラクゼーション・サロン、ビューティ・サロンなどの入り口にも、大きな「仏像の頭」。

    そして、運河のナロー・ボートのてっぺんにも「仏像の頭」。

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    確かに、Buddha headで検索してみると、イギリスで販売されているレプリカの商品がいとも簡単に多数ヒットし、こちらでは一般的な人気アイテムのよう。

    ここでも、思い起こせば、海外貿易が盛んになった大航海時代・17世紀のイギリス。大英博物館にコレクションされた頭部だけの仏像。一方、中国やタイの寺院で、頭部だけが切り取られた仏像が並んでいる姿。

    真偽のほどは確かではありませんが、その当時のイギリス人にしてみれば、貴重な仏像の頭部は財宝であり、その財宝の眠るエキゾチックな遠いアジア諸国へ富を求める経済力やロマンを象徴し、異国情緒あふれるモチーフとしてあがめられたのではないかと・・・。

    また、60年代のSwinging London (揺れ動くロンドン)、Swinging Sixties(揺れ動く1960年代)には、ヒッピーたちが自然への親和感と既存権力への反逆性との象徴として、インド仏教への関心をそそられ、仏教用語や仏像モチーフなども多用されましたが、その流れで仏像の頭部をインテリアやエクステリアに取り入れ始めたその世代のロンドナーも大勢いるようなに思います。

    パイナップル、仏像の頭部 ー ロンドンの18〜19世紀当時そのままの住宅建築を眺めながらのまちあるき、歴史と当時の人々の流行が映し出されているようで、想像をかきたてられます。

     

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